台南:台湾の歴史が始まった街
台南は台湾でもっとも古い都市であり、二百年以上にわたって島の首府として栄えました。物語は1624年、オランダ東インド会社が現在の安平地区の砂州にゼーランディア城、今の安平古堡を築いたところから始まります。風雨に耐えた赤レンガの城壁は今も残り、展望塔に上れば、かつて東アジア有数の貿易拠点だった港を一望できます。古堡から歩いてすぐの安平樹屋では、巨大なガジュマルが古い倉庫を丸ごと飲み込み、気根が凍りついた滝のように壁や天井から垂れ下がる不思議な光景が広がります。木製の遊歩道が整備されているので、レンガと樹根が絡み合う迷宮を安全に歩き回れます。見学のあとは安平老街をぶらり。ドライフルーツやエビせんべいの老舗、豆花の甘味処が軒を連ね、食べ歩きにぴったりです。
市中心部の赤崁楼は、オランダ人が1653年に築いたプロヴィンティア城の土台の上に建ち、現在は清代の優美な楼閣が二棟そびえています。庭園には亀に似た霊獣の背に乗った石碑がずらりと並び、歴史好きにはたまらない一角です。そこから南へ少し歩けば、1665年創建の台南孔子廟。全台首学、つまり台湾最初の学校として知られ、赤い塀の内側には老樹が影を落とす静かな中庭が広がります。参観は人の少ない午前中がおすすめで、帰りに向かいの路地で冬瓜茶を一杯飲めば、古都のゆったりした時間が体に染みてきます。
台湾一の美食の都
台湾の人に台南について尋ねると、話題は必ず食べ物になります。台南は台湾の食の都とされ、屋台から屋台へ食べ歩く文化に合わせて、量も値段も味も絶妙に調整されています。名物の筆頭は担仔麺。コシのある麺に豚そぼろをのせ、エビだしのスープをかけ、ぷりぷりのエビを一尾添えた小ぶりの一杯です。この料理を伝説にした老舗、度小月の創業は1895年。台風で船を出せない閑散期、いわゆる小月をしのぐため、一人の漁師が麺を売り始めたのが起源です。一杯約NT$60、五分で食べ終わるおいしさです。
もうひとつの名物が棺材板。厚切りトーストをきつね色に揚げ、中をくり抜いてクリーミーなシーフードシチューを流し込み、サクサクのパンの蓋をかぶせた台南生まれの一品です。さらにサバヒー(虱目魚)は南台湾の食卓の主役で、朝は魚肚粥、昼は香ばしく焼いた切り身、夜は夜市の魚皮スープとして登場します。老舗めぐりに加えて、国華街と保安路の界隈は小吃の激戦区。碗粿や鱔魚意麺、牛肉湯の店が延々と続き、一日では食べきれません。屋台グルメの多くはNT$40〜80なので、お腹を空かせて訪れるのが台南の正しい歩き方です。早朝から営業する牛肉湯(牛肉スープ)の店も多く、切りたての牛肉に熱い澄んだスープを注ぐ一杯は、早起きして並ぶ価値が十分にあります。
高雄:南部の港町
台南からさらに南へ約1時間、台湾第二の都市であり最大の港湾都市、高雄に到着します。定番の最初の目的地は左営の蓮池潭。湖の周りには廟や塔が立ち並び、なかでも七重の双塔、龍虎塔が有名です。龍の口から入り、虎の口から出ると、厄が福に変わると伝えられています。湖畔には春秋閣などの見どころも点在し、遊歩道を一周するとおよそ1時間。おすすめは夕方で、低い太陽に照らされた塔が金色に輝き、湖面に映る姿は高雄を代表する絶景です。
市街地では、地下鉄美麗島駅で降りて天井を見上げてみてください。イタリアのガラス芸術家ナルシサス・クアグリアータが手がけた光のドームは、直径30メートルに水・土・光・火の物語を描いた、世界最大のガラスアート作品。毎日数回、短いライトショーも開催されます。この駅は海外メディアの世界一美しい地下鉄駅ランキングにもたびたび登場し、いまや街のシンボルになっています。改札を出る前に、ぜひ数分足を止めて見上げてみてください。
アートの波止場と旗津島
港沿いに広がる駁二芸術特区は、使われなくなった倉庫群をギャラリーやデザインショップ、カフェへと再生したエリアです。巨大な壁画やオブジェが点在し、その間をライトレールが走り抜けていきます。週末にはマーケットや路上パフォーマンスでにぎわうので、静かに作品を見たい人は平日の訪問がおすすめ。近くの鼓山フェリー乗り場から約10分で旗津島へ渡れます。細長い島には海鮮グルメの通り、黒砂のビーチ、古い灯台があり、レンタサイクルで島を巡るのが人気です。海鮮の値段は市内より手頃で、イカの炭火焼きや焼き牡蠣が名物。本土に戻ったら、愛河のほとりを散歩するか遊覧船に乗って一日を締めくくりましょう。夜のライトアップは格別です。
仏光山と大仏
半日の余裕があれば、バスで郊外の仏光山へ足を延ばしてみてください。台湾最大の仏教寺院で、八つの塔が並ぶ参道の先に仏陀記念館と仏光大仏が待っています。島内でもっとも高い青銅の坐仏で、その存在感は圧巻です。境内への入場は無料、精進料理のレストランも評判が高く、宗教を問わず訪問者を温かく迎えてくれます。旧正月前後に開かれる灯りの祭典の時期に訪れれば、山全体が無数のランタンで輝く幻想的な光景に出会えます。
旅の実用情報
南部へのアクセスは簡単です。台湾高速鉄道(高鉄)なら台北から左営まで約1時間半〜2時間、普通車の運賃は約NT$1490。台南へは高鉄台南駅からシャトル列車で市内に入るか、在来線の台鉄で中心部の台南駅まで直行できます。南部観光には2〜3日を見込みましょう。台南の見どころは中心部に集まっているので徒歩とバスで十分。高雄はKMRTとライトレールを悠遊カードかiPASSで乗りこなせば主要スポットを網羅でき、宿は美麗島駅か中央公園駅の周辺が便利です。気候は台北より暖かく乾燥していて、冬でも晴天が多いので、涼しい季節の旅行先として最適です。予算の目安は、屋台グルメ中心なら食費が一日NT$300〜500ほど。中級ホテルならNT$1500〜2500前後で快適に泊まれます。
- 高鉄 台北〜左営:約1.5〜2時間、普通車約NT$1490
- 担仔麺:NT$50〜70/棺材板:NT$60〜80
- 旗津行きフェリー:悠遊カードで約NT$40
- モデルプラン:台南2泊+高雄1〜2泊