陽明山:街の真上に広がる火山公園
首都のすぐ北側に国立公園が接している都市は、世界でもそう多くありません。陽明山は休火山と噴気孔、風の吹き渡る草原が織りなす景色で、台北中心部からバス一本で行けてしまいます。小油坑では崩れた斜面の裂け目から硫黄の蒸気が音を立てて噴き出し、木道を歩けば独特の匂いがずっとついてきます。擎天崗の高原では水牛が草を食み、なだらかな遊歩道が草原を縦横に走っています。冷水坑や夢幻湖もハイキングの人気起点で、初心者でも歩きやすいコースばかり。2月から4月には桜とツツジが次々に咲き、山はピンクと紫に染まり、台北中の人が花見に登ってくる季節です。春の竹子湖のカラー畑も地元っ子に人気の撮影スポット。バスは剣潭駅や北投駅から出ており、帰りに北投温泉に立ち寄るのも定番コースです。山は天気が変わりやすいので、薄手のレインジャケットを忘れずに。秋には大屯山や擎天崗の斜面が銀色のススキに覆われ、10月から11月には写真愛好家が集まります。花のシーズンの週末は一部道路が交通規制されるため、バスでの入山が安心です。
淡水:古い砦と屋台グルメ、最高の夕日
MRT淡水線の終点で降りると、広い河口に沿って街が広がり、のんびりした午後のために作られたような雰囲気が漂います。紅毛城はひとつの敷地に四百年の歴史が詰まった場所。1620年代にスペイン人が築き、オランダ人が再建し、その後は英国が約百年にわたり領事館として使用しました。隣には赤レンガの英国領事官邸が今も残り、歴史好きなら近くの滬尾砲台や真理大学の赤レンガ校舎まで足を延ばすのもおすすめです。麓の老街で味わいたいのが名物の阿給(アーゲイ)。揚げ豆腐に春雨を詰め、魚のすり身で封をした一品で、熱々を約NT$40で楽しめます。鉄蛋(煮込み卵)や魚のスナックはお土産の定番。その後は漁人碼頭まで歩くか船で渡り、白い斜張橋、情人橋越しに沈む夕日を眺めましょう。北台湾一の夕日と呼ぶ人も多い絶景で、夕暮れの船着き場ではストリートパフォーマンスもよく開かれています。時間があれば、対岸の八里へフェリーで渡り、川沿いのサイクリングロードを走るのも台北っ子に人気の過ごし方。渡船は悠遊カードでそのまま乗れて、片道約NT$34です。
野柳と基隆:奇岩と夜市の海の幸
北海岸の野柳地質公園は、風と波が金色の砂岩を削り上げた細長い岬です。キノコ岩や蜂の巣状の岩壁、仙女の靴や燭台岩と名づけられた奇岩が園内のあちこちに並びます。主役はなんといっても女王頭(クイーンズヘッド)。細い首は侵食で年々さらに細くなっており、いつか折れてしまうと地質学者も認めています。だからこそ、今のうちに写真を撮ろうと行列ができるのです。海沿いの遊歩道は見晴らし抜群ですが、日差しと立入禁止ラインには注意を。野柳とセットで訪れたいのが港町・基隆。夕方に港を散歩してから、碁盤の目のような路地に数百の屋台がひしめく廟口夜市へ。カニのとろみスープ、バター蒸しガニ、一口サイズの腸詰めを目当てに、台北からわざわざ夕食だけ食べに来る人もいるほどです。アクセスは台北駅から金山方面の高速バスに乗り、野柳バス停から徒歩約10分。開園は8時から17時で、団体バスが到着する前の朝一番に入るのがゆっくり見学するコツです。
烏来:滝と温泉、タイヤル族の文化
市内から南へ約1時間、道路が緑の渓谷へと分け入った先に、先住民タイヤル族の山あいの集落、烏来があります。集落の対岸の崖からは落差80メートルの烏来瀑布が流れ落ち、北台湾でも有数の高さを誇ります。かつて木材を運んだトロッコ軌道の跡を小さな観光列車がのんびり走り、滝の駅からはロープウェイで渓谷を見下ろす展望地へ上がることもできます。川沿いには素朴な湯船から上質な温泉旅館まで湯処が並び、老街では竹筒飯やイノシシ肉のソーセージといったタイヤル料理が味わえます。冬の温泉シーズンは混み合うので、できれば平日に。地下鉄の走る都心からわずか1時間とは思えない別世界です。行き方はMRT新店駅から849番バスに乗るだけ。終点が烏来観光センターで、車窓に広がる渓谷の景色だけでも乗る価値があります。
鶯歌:自分の碗をろくろで作る
台北の南西にある鶯歌は、約二百年の歴史を持つ台湾の陶芸の町です。充実した陶瓷博物館では、素朴な土器からハイテク磁器までの歩みをたどることができ、老街には工房やショップがずらり。NT$100の湯呑みから美術館級の青磁まで何でも揃います。多くの工房ではろくろ体験ができ、職人に教わりながら自分だけの碗を成形し、焼成と釉薬を施したうえで自宅まで送ってもらえます。歩き疲れたら、陶器のカップでコーヒーを出す店やかき氷の店でひと休み。時間が許せば、隣町の三峡老街と祖師廟を同じ日に組み合わせるのもおすすめです。アクセスは台北駅から台鉄の区間車で約30分、駅から老街までは徒歩15分ほど。ろくろ体験は人気なので、週末は事前に予約しておくと安心です。
日帰り旅の組み立て方
ここで紹介したルートはすべて公共交通で回れます。悠遊カードにチャージして、MRTと路線バスを乗り継ぐか、台北駅から台鉄の列車で海沿いへ向かいましょう。北海岸には野柳・九份・十分を一日で結ぶ便利な混載バスツアーもあります。九份、十分、ランタン上げで有名な平渓線は、それだけで一本の記事になる定番なので、ここでは名前だけにとどめます。各目的地の所要は半日から丸一日。山や海辺は市街地より体感温度が数度低いことも多く、出発前の天気予報チェックは必須です。山間部のバスは本数が少なく、一本逃すと30分待ちということもあるので、時刻表を事前に調べておくと安心。そして、できれば平日に出かけましょう。週末は台北中の人が同じことを考え、野柳や淡水の川辺には長い行列ができます。夏の北海岸は日差しが強烈なので、日焼け止めと帽子、飲み水を忘れずに。冬は東北の季節風で海辺の体感温度がぐっと下がるため、防寒着があると快適です。多くの見どころは夕方4〜5時ごろに閉まり始めるので、朝早めの出発が一日を長く使ういちばんのコツです。
- 陽明山行きバス:悠遊カードでNT$15〜30
- MRT台北駅〜淡水:約NT$50、40分
- 野柳地質公園入場料:NT$120/台鉄 台北〜基隆:約NT$40〜60
- 新店〜烏来 849番バス:約NT$15