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台湾温泉の旅:北投から海に湧く朝日温泉まで

Turistic · 15.07.2026

台湾は環太平洋火山帯の上に位置し、島のあちこちから湯けむりが立ち上る。温泉地は100か所を超え、北部・大屯火山群の硫黄泉から東海岸の渓谷に湧く炭酸水素塩泉、さらには離島の海中に湧く塩水の湯まで、泉質と景観の多彩さは世界的に見ても珍しい。しかも台湾の入浴文化は驚くほど身近で、台北の中心部から地下鉄で1時間もかからずに湯けむりの公衆浴場へ行ける。入浴料がコーヒー1杯より安いことも珍しくない。日本人旅行者にとっては、どこか懐かしく、それでいて新鮮な温泉体験が待っている。

日本統治時代に生まれた入浴文化

台湾の近代的な温泉文化は、1895年から1945年まで続いた日本統治時代に始まった。故郷の湯を恋しがった日本人が各地の温泉を体系的に開発し、公衆浴場や温泉旅館を建てた。当時は北投、陽明山、関子嶺、四重渓が四大名湯と呼ばれた。入浴前に体を洗う、静かに湯に浸かる、湯を大切にするという作法もこの時代に根づいたものだ。戦後は多くの浴場が荒廃したが、1990年代に温泉ブームが再燃し、歴史的建築が次々と修復されて、温泉は再び台湾の週末の楽しみになった。寒波が来ると各温泉地は予約で埋まるほどの人気だ。

北投:地下鉄終点の温泉郷

入門に最適なのが北投だ。台北MRT淡水信義線で北投駅へ行き、一駅だけの支線に乗り換えて新北投駅に降りると、ほのかな硫黄の香りが漂う谷に着く。公園の中央を温泉の川が流れ、坂を少し上れば地熱谷、通称・地獄谷。エメラルド色の池から絶えず湯気が立ち上り、水温は摂氏80〜100度。眺めるための場所であり、触れてはいけない。ここで産出される北投石は微量のラジウムを含み、台湾の地名を冠した世界唯一の鉱物として知られる。

北投温泉博物館は1913年に建てられた公衆浴場を利用した施設で、かつては東アジア最大級の浴場だった。煉瓦のアーチ窓と木造回廊が美しく、入場は無料。これを見るだけでも訪れる価値がある。近くの北投図書館は木造のエコ建築で、公園に浮かぶ船のような名建築として世界の美しい図書館にも数えられる。入浴は予算に応じて選べる。公共露天風呂の千禧湯は入場約60台湾ドルで、温度の違う段々の湯船が楽しめる。中山路沿いのホテルでは2人用の貸切風呂が1時間およそ800〜1500台湾ドル。白濁の白磺と透明な青磺、泉質の違いを試すのも一興だ。

烏来(ウーライ):タイヤル族の山里

台北から南へ約1時間、山あいの烏来は台湾原住民族のひとつタイヤル族の集落で、地名はタイヤル語の熱い湯に由来する。南勢渓の渓谷には落差80メートルの烏来瀑布がかかり、かつて木材を運んだトロッコ軌道の跡が残る。川岸には石を積んだ無料の露天風呂があり、地元の人々がジャングルに覆われた崖を眺めながら湯に浸かる。湯は無色無臭の炭酸水素塩泉で、肌がつるりとする美人の湯だ。老街ではイノシシ肉のソーセージ、竹筒飯、粟の餅が味わえる。湯上がりの食べ歩きにちょうどよい。

礁渓・知本・谷関

宜蘭県の礁渓は雪山トンネルを抜けるバスで約1時間。市街地の真ん中に湯が湧く珍しい町で、駅近くの湯囲溝公園には無料の足湯があり、いつでも腰掛けて足を温められる。角質を食べてくれる小エビの湯という名物風呂まである。台東近郊の知本は炭酸水素塩泉で知られ、知本渓沿いに温泉ホテルが並び、隣接する森林遊楽区にはサルが群れる。台中県の山中、標高約800メートルの谷関は川沿いに宿が並ぶ古典的な山の温泉地。吊り橋を渡る散策路があり、秋は紅葉が美しく、涼しい空気のおかげで昼間の長湯も快適だ。台中市内からバスで約2時間で着く。

朝日温泉:海に湧く塩水の湯

台湾で最も特別な湯は、台東沖の火山島・緑島にある。朝日温泉は世界でも数えるほどしかない海水温泉のひとつで、岩場の潮間帯に露天の丸い湯船が造られ、熱い鉱泉と太平洋の海水が混ざり合う。湯に浸かりながら波の音を聞くという得がたい体験ができる。夜明け前から営業しており、消えゆく星空の下で湯に浸かり、水平線から昇る朝日を眺めるひとときは、フェリーで渡る価値が十分にある。入場料は約200台湾ドル。緑島へは台東の富岡漁港から船で約50分だ。

さらに湯めぐり:関子嶺と四重渓

南部へ足を延ばすなら、台南の関子嶺もぜひ訪れたい。ここには台湾でも珍しい泥の温泉が湧き、灰色の湯には細かな鉱物の粒子が溶け込んでいる。泥を全身に塗って洗い流せば、肌は驚くほどすべすべになる。日本統治時代には北投と並び称された名湯だ。屏東の四重渓は恒春半島の古い温泉地で、かつて日本の皇族も訪れた歴史を持つ。墾丁観光と組み合わせやすい立地で、冬には温泉祭りも開かれる。北投、陽明山と合わせれば、統治時代の四大名湯をめぐる温泉テーマの島内一周旅行が完成する。

入浴マナーと実用情報

  • 入浴前には必ずかけ湯とシャワーで体を洗うこと。洗い場は必ず用意されている。
  • 男女別の公衆浴場は基本的に裸で入り、水泳帽の着用を求められることが多い。混浴の露天風呂は水着着用。入口で規則を確認しよう。
  • 1回の入浴は10〜15分まで。合間に休憩と水分補給を。心臓や血圧に不安のある人は高温の湯を避け、空腹時や飲酒後の入浴も控えること。
  • ベストシーズンは11月から3月。涼しい空気の中の湯は格別だ。夏は谷関など山の温泉を選ぶか、冷泉で涼むのもよい。
  • 大衆浴場では携帯電話での撮影は禁止が基本。貴重品はロッカーへ。長い髪は結んで湯に浸けないのが礼儀だ。
  • 週末や寒波の日は人気の貸切風呂が予約で埋まりやすい。平日なら空いていて、料金が安くなることもある。

予算の目安:礁渓の足湯と烏来の野渓温泉は無料、北投の千禧湯は約60台湾ドル、緑島の朝日温泉は約200台湾ドル、ホテルの貸切風呂は1時間800台湾ドルから。地下鉄で行ける百年の名湯から太平洋に湧く海水の湯まで、この値段でめぐれる国はそう多くない。旅程の軸に温泉を据えれば、台湾のいちばんくつろいだ表情に出会えるはずだ。

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